短期的な行動と長期的な成果のジレンマ:未来を見据えるリーダーシップの重要性
ビジネスの現場では、日々、予期せぬ問題が発生し、顧客からの要望が舞い込み、競合の動きに対応する必要に迫られます。これらの「今、ここにある課題」を放置することは、多くの場合、許されません。たとえ放置しても大きな損失には繋がらない些細な問題であったとしても、心理的に「見て見ぬふり」をするのは難しいものです。このように、私たちの行動はどうしても短期的な対応にならざるを得ないという現実があります。
一方で、イノベーションの実現、新たな市場の創造、持続的な競争優位性の確立といった、真に価値のある優れた成果は、決して短期間では達成できません。 それらは必然的に、長期的な視点に立った粘り強い取り組みを必要とします。
経営学の大家ピーター・ドラッカーは、かつてアメリカ企業が四半期ごとの決算に一喜一憂していた時代に、多くの日本企業が「10年後、我々はどうあるべきか」という長期的な視点で経営を考えていたことを指摘し、そこに日本企業の強さの一因があったと述べています。短期的な利益追求に偏重すると、未来への投資が疎かになり、結果的に長期的な成長機会を失いかねません。
なぜ長期的な視点が重要なのか?
それは、長期的な目標こそが、日々の短期的な行動の「羅針盤」となるからです。
例えば、「10年後に業界のリーディングカンパニーとなり、持続可能な社会の実現に貢献する」という明確な長期目標があれば、目の前で起きている問題や課題が、その目標達成にとって本当に重要なのか、あるいは些末なことなのかを判断しやすくなります。「木を見て森を見ず」の状態に陥ることなく、本質的な課題にリソースを集中させることができるのです。長期的な視点があれば、短期的な困難や失敗も、目標達成へのプロセスの一部として捉え、乗り越える力が湧いてきます。
(次号へ続く)
2025年05月12日
この記事へのコメント
コメントを書く